Typoless 導入事例 | 業種:地方自治体
龍ケ崎市 様
自治体の広報業務にデジタル校正を導入した理由
- 広報紙の校正業務の負荷が増大して、切迫した課題に
- 人件費を減らせる根拠を示し、ランニングコストを予算化
- 校正の時間や頻度だけでなく、担当者の精神的な負荷も軽減
茨城県南部に位置する龍ケ崎市は、都心から電車で1時間以内の通勤圏にあり、子育て世代が住みやすいことでも知られている。秘書広聴課の主要業務の一つが、70年の歴史を持つ広報龍ケ崎『りゅうほー』の編集、発行作業。市政や生活に関する充実した情報を市民に届けているが、外部委託ではなく、完全DTPのため定期発行に伴う校正業務の負担が大きくなっていた。課題解決のために文章校正AI「Typoless」を採用した経緯や、行政機関ならではの導入のハードル、それを乗り越えた方法などについて、同課の関口様に聞いた。

広報紙の校正業務の負荷が増大して、切迫した課題に
――龍ケ崎市の広報・プロモーション業務の特徴と、文章の正確さの必要性について教えてください。
関口裕城 様(以下「関口」) 龍ケ崎市は都心へのアクセスが良く、「こどもの笑顔が続くまち」を目標に、子育て世代のライフステージに応じたさまざまな支援に取り組んでいます。緑豊かな自然環境に囲まれ、2024年には老朽化した龍ケ崎市森林公園のリニューアル事業として「アドベンチャーバレー・龍ケ崎」がオープンしました。
秘書広聴課が扱っている文章は、主に広報紙とプレスリリース、市長の記者会見などの原稿です。行政機関として、より正確でわかりやすいことが重要で、「伝える」のではなく「伝わる」ことを意識しています。特に「正確な情報が伝わる工夫をする」「誰もが理解できる表現をする」「要点を中心にわかりやすくする」「読者目線で市民が知りたい内容にする」「さまざまな角度から表現を判断する」といった点には配慮しています。

――「Typoless」の導入前には、どんな課題がありましたか?
関口 2024年4月に異動して私が実感したのは、広報紙の校正作業が非常に大変だということです。約24ページの広報紙を月2回出すのに、最大6人体制でチェックしていました。たとえば原稿が来た時点で1回、レイアウトを組んでから1回。全ページが仕上がったら全員でチェックして、モノクロの校正で1回、カラーの校正で1回、入稿してから色校正で1回。他の業務にも追われながら、校正を繰り返していました。
そうすると、人によって校正内容にバラつきや、気づかない漏れも出ていました。職員一人ひとりによる校正は、かけた時間の割には精度が十分でないという課題は、私が以前から担当していたプレスリリースの作成業務でも感じていました。
――「Typoless」を導入することで、どのような効果を見込んでいましたか?
関口 導入したら絶対に便利になる、というのが第一印象です。2024年6月に私が自治体向けの展示会に行った際、たまたま会場に入ってすぐにTypolessのブースを見つけて、「課のみんなが課題に感じていたことを解決できる!」とテンションが上がりましたね。
話を聞いて、「文章をここまで直してくれるのか」という感動さえありました。まずは、すぐにでもトライアルをしてみようという話になりました。

人件費を減らせる根拠を示し、ランニングコストを予算化
――校正ツールの導入にあたり、他にどのようなサービスを比較検討されましたか?
関口 クラウド型のサービスと、パッケージ型のサービスをそれぞれいくつか比較しました。重視していたのは、それまでの校正作業でも使用していた報道機関の用語集に当たる基準から、できるだけ変わらないで校正ができるということです。
――その中で「Typoless」を選ばれた理由を教えてください。
関口 報道機関が提供するサービスである点は、確実に刺さっていました。新聞社が自社開発した、新聞記事の校正履歴を学習させたAIは高い精度を有するサービスであり、新聞社基準の校正ルールに準拠してきたので、導入を進めるうえでも説明がしやすかったです。実際に使っている側としては、画面が見やすくて操作がシンプルな点を気に入っていました。
また、広報紙の場合は、レイアウトを組んでPDFにしてから校正することが多いので、「エンタープライズ+Plusプラン」がPDF校正に対応していたのも理由の一つです。PDFに対応している競合のサービスは少なく、対応している場合でも、Typolessの方が精度は圧倒的に高く、安心して使えると思いました。

――「Typoless」の導入を検討・決定された方はどなたでしょうか?
関口 グループ内の校正に関わるメンバーで話し合い、まずは、無料トライアルに向けての手続きを進め、デジタル部門にも相談しました。近年は行政でもDXで業務を効率化しようという流れもあって、理解を得られました。
トライアル後のステップとして、有料のツールを利用するためには、市の予算に乗せることが必要です。課で事業計画を提出した結果、2025年度の当初予算案に組み入れられました。25年6月からエンタープライズ+Plusプランを正式契約しています。
――導入にあたりネックになることはありましたか?
関口 懸念したのは、クラウド型のサービスであるため、パッケージ型に比べてランニングコストがかかることです。ただ、そのコスト以上にメリットがあると感じたのが開発のスピードです。私たちが検討を始めたときは、PDFファイルの校正機能はありませんでしたので、PDF機能はニーズがあるのではとの思いは伝えていました。PDFファイル校正の機能がリリースされ、アップデートが早いことを感じました。サービスが日々良くなるという期待感があり、パッケージ型だとバージョンアップした商品を買い直さなければならないというのも大きかったです。
――「Typoless」導入の予算化に向けた説明において、工夫された点があれば教えてください。
関口 事業計画は、現状と課題を説明し、システムを導入するときと同様にランニングコストと効果についてもまとめました。ポイントは、作業にかかる人件費を算出して、それをどれだけ減らせるかを示したことです。広報紙やプレスリリース、市長の挨拶原稿など、年間300回以上の校正の機会があり、 Typolessを入れることによって作業の時間が圧縮され、その時間を他の仕事に充てられるという説得材料を用意していました。かつ、ミスを減らせるという点にも触れています。

校正の時間や頻度だけでなく、担当者の精神的な負荷も軽減
――秘書広聴課様では現在、「Typoless」をどのような業務内容に利用されていますか?
関口 広報紙は、6月から月1回で32ページにリニューアルするのとほぼ同じタイミングで使い始めています。校正の回数は5、6回から3回程度にまで減り、全員がそろって一気に校正することもなくなり校正にかける人数も減っています。
プレスリリースは年間130~140本程度で、2~3人の職員が2回程度チェックしています。市長が毎月の定例記者会見などで話す原稿もチェックしており、この3つが大きなウェートを占めます。ほかには、市の公式SNSの文章などに使うこともあります。
とても役に立っているのが「良文サポート」機能で、100文字以上の文章や冗長な表現を指摘してくれます。その結果、文章の質が上がっていると感じています。
――今後は「Typoless」をどのように活用していきたいですか?
関口 広報紙などに引き続き活用していく予定で、さらに便利になるようにカスタム辞書への用語の登録も進めています。
「申し込み」「問い合わせ」などのよく使う用語のほか、300語以上を登録しました。特に「りゅうがさき」の表記は、市の施設や公文書などでは「龍ケ崎」に統一していますが、企業や行政機関によっては、常用漢字の「竜」を使っています。小さな「ヶ」を使うケースも混在しており、それぞれの正式な表記を登録しています。
職員が自分用に作成していたExcelファイルをTypolessにインポートし、校正のたびに登録しておいたほうが良いと思う用語が見つかれば随時追加しながら、オリジナルにカスタマイズして活用していきたいですね。

――「Typoless」導入後、現場の業務にどのような変化がありましたか?
関口 校正にかける回数や人数が減っただけでなく、1回の校正にかける時間も大幅に減りました。1ページあたり20分ほどかかっていた職員が、半分の時間でチェックを完了できるようになりました。
作業の時間自体が減ったのももちろん、初期の原稿の段階で Typolessを入れているため、赤字(修正)の数が減り、後の工程でチェックする内容も減っています。
人の目からデジタルでのチェックに移行したことにより、確認漏れや表記のバラツキが少なくなったのも助かっています。文字や表現の校正ばかりに集中していたのが、文章全体を読者目線でチェックするという余裕も出てきたように思います。担当者の間では、校正を終えたPDFに「タイポ済」などのスタンプを押すことがはやっていますね(笑)。
メンバーがよく言っているのは、校正の時に精神的なストレスが実はあったということです。Typoless を導入したことで、業務負荷が減ったのはもちろん、間違えたらどうしようというプレッシャーが軽減され、安心感が全然違います。「心が軽くなった」と話す担当者もいて、ワークライフバランスにも少しは貢献できているのではないかと思います。
――行政機関という観点から、「Typoless」への意見や要望があれば教えてください。
関口 文化庁では2022年に「公用文作成の考え方」を取りまとめて、公用文を書くうえでの手引きを約70年ぶりに改訂しています。行政の文章の作成方法のルールをTypolessに取り入れることができれば、他の行政機関も導入しやすくなるのではないでしょうか。また、自治体ごとにある財務規則に対応しやすい料金プランがあれば、より利用しやすくなると思いました。
龍ケ崎市では、LGWAN(総合行政ネットワーク)などのネットワーク環境は三層分離の「αモデル」を採用し、インターネットは仮想空間で利用しています。Typolessは仮想空間でも問題なく使えています。
また、公務員は異動のサイクルが早いと言われますが、従来の校正方法ではノウハウを短期間で引き継ぐのは非常に難しかったのも事実です。異動したばかりの人もTypolessを使うことによって、迷いが少なくなり、ノウハウをデジタルで継承できると思います。
龍ケ崎市
人口74,312人(2025年10月1日現在)。1954年に市制施行。JR常磐線で上野から最速30分余りで、都内に通勤する市民も多い。地名の由来は、龍が降ってきたという言い伝えや領主の名前などの諸説あり。西側には「うな丼発祥の地」とされる牛久沼があり、最近ではコロッケでの町おこしが有名になった。東京2020オリンピック銅メダリストの野口啓代さんを輩出し、「スポーツクライミングのまち」を推進している。
【URL】
https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/
【広報龍ケ崎『りゅうほー』】
https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/shisei/koho/koho/ryuho/
【プレスリリース】
